備蓄品管理の効率化で 自治体の防災力向上を支援
店舗の棚卸を本業とする株式会社エイジスが、自治体の備蓄品管理をサポートするサービスを展開し、注目を集めている。培ってきた棚卸のノウハウを活かし、自治体の抱える備蓄管理の課題解決に取り組む―。民間企業ならではの視点とスキルが、自治体の防災力強化に大きく貢献しようとしている。サービス立ち上げの経緯と今後の展望について、株式会社エイジス 防災サービススペシャリスト 白井孝氏に話を聞いた。
株式会社エイジス
防災サービススペシャリスト 白井 孝 プロフィール
- コンサルタントとして20年以上のキャリアを積み、2022年にエイジス入社。
- 新規事業開発に従事し、日本で初めて自治体向け備蓄品管理サービスを全国展開する。
- 防災スペシャリストとして防災備蓄に関する調査分析や職員向けセミナー講師も務める。
- 被災自治体職員の避難所運営や備蓄にまつわる体験を残し、共有する活動もスタートさせている。
熊本地震での経験が、サービス立ち上げのきっかけに
―備蓄品管理サービスを始めたきっかけを教えてください
きっかけは2016年の熊本地震でした。被災地に全国から支援物資が集まりましたが、それを仕分けたり管理したりする人手が足りず、体育館に物資が山積みになっている状況がニュースで報道されていました。弊社は店舗の棚卸を45年間手掛けてきた実績があり、その過程で、何が、どこに、どれだけあるか。をデータ化することに強みを持っています。そのノウハウを生かせる余地があるのではないかと考えたのがサービス立ち上げの出発点でした。
実際に避難所に足を運び、備蓄品管理の状況を確認しました。その結果、備蓄品の数量確認や入れ替えなど、管理業務の負担の大きさが浮き彫りになりました。
一方で、災害時の対応だけでは事業として成り立ちにくいという課題もありました。そこで着目したのが、平時の備蓄品管理業務です。自治体の方々から、「平時の備蓄品の点検や入れ替え、賞味期限管理などが大変だ」という声が多数あったので、弊社のノウハウを活用し、平時の備蓄品管理をアウトソーシングするサービスの提供を開始したのです。
自治体の備蓄倉庫の課題解決に向けて、ワンストップのサービスを提供
―具体的なサービス内容を教えてください
弊社のサービスは大きく分けて4つあります。1つ目は棚卸です。備蓄倉庫内の在庫を把握し、何がどこにあるのかを明確にします。2つ目は点検。発電機やラジオなどの機器が、いざという時に確実に使用できるよう動作確認を行います。3つ目はレイアウトマップの作成。備蓄倉庫内の配置を可視化することで、職員だけでなく地域住民の方々にも、備蓄品の位置を把握していただけるようにします。4つ目は整理整頓。倉庫内の備蓄品を整理し、出し入れしやすい環境を整えます。その際、賞味期限が近いものを手前に配置するなどの工夫をします。
これらのサービスをワンストップで提供することで、自治体の備蓄品管理の負担を大幅に軽減できると考えました。
―導入自治体からの反響はいかがでしょうか
現在は東京都大田区や足立区、千葉市など、大都市を中心にサービスを導入いただいています。実際に備蓄倉庫の管理を任されている自治会の方々からは、「備蓄品の管理が大変だったが、エイジスさんに整理していただいたおかげで負担が減った」といった声をいただいています。近頃は中小の自治体からの問い合わせや公示も増加傾向にあり、この新しいサービスが広がりつつあるのを感じます。
また、備蓄倉庫の3Dバーチャルマップを導入した自治体からは、「倉庫に行かなくても、パソコンやスマホで現状を確認できるようになった」とこちらも好評です。職員からは、「管理が良くなった倉庫を見た住民の不安解消にもつながっているようだ」と喜びの声を多数いただいております。
防災力向上のカギは、官民連携にあり
―今後の展望について教えてください
大規模な災害が頻発する中、自治体の防災力向上は喫緊の課題です。弊社としては、備蓄品の管理だけでなく、計画策定から調達、処分まで、備蓄業務のすべての工程をトータルでサポートできる体制を整えていきたいと考えています。
加えて、自治体間でのデータ共有・連携の推進にも貢献していきたいと考えています。これまでは自治体ごとにバラバラの管理方法が取られてきましたが、いざという時に円滑に支援物資を融通し合えるよう、一定のルールに基づいたデータ管理が求められます。弊社では、現場での作業支援だけでなく、デジタル化の部分でもお役に立てればと思います。地域の防災力向上を通じて住民の命を守ること。それが弊社の使命だと捉えています。
―全国の自治体へのアドバイスやメッセージをお願いします
災害はいつ起こるかわかりません。その時に備蓄品を確実に使用できる状態にしておくことが、私たち民間企業にできる防災・減災への貢献だと考えています。備蓄品管理の主体はあくまで自治体ですが、管理のノウハウを持つ民間企業と連携することで、職員の負担を減らしつつ、備蓄品管理の質を高めることができます。ぜひ、官民連携の力を防災分野にも活用していただければと思います。
(取材日:2024年5月2日)
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