一般社団法人 自治体DX推進協議会

現地消費型ふるさと納税「ココふる」が目指す
新しい地方創生・地域活性化

2023年10月より規制が厳格化されたふるさと納税5割ルールや地場産品といった規制に対する策として、現地消費型・決済型と呼ばれるタイプのふるさと納税に注目が集まっている。多くの新規事業者が参入し、市場は活況を帯びている。現地消費型・決済型は、ふるさと納税の新潮流となるか。独自の決済ソリューションを活用し、「最もシンプルな現地消費型ふるさと納税の実現」を掲げる株式会社ユニヴァ・ペイキャスト大堀光義氏に話を伺った。

 

 

株式会社ユニヴァ・ペイキャスト リサーチ & ディベロップメント部 部長 大堀 光義様

株式会社ユニヴァ・ペイキャスト
リサーチ & ディベロップメント部 部長 大堀 光義 プロフィール
  • 決済業界で15年以上のキャリアを積み、2022年に株式会社ユニヴァ・ペイキャスト入社。
  • 新規事業開発部門に従事し、新サービスとして現地消費型ふるさと納税「ココふる」をリリース。
  • 従来の事業領域の枠を超えたイノベーションの創出に邁進している。


 

 

ふるさと納税を通じて、自治体そして地域との接点を

 

―貴社の概要、提供サービスについて教えてください

当社は2001年に創業し、オンライン・オフラインの取引におけるクレジットカード、電子マネー、コンビニ決済などあらゆる決済手段に対応したマルチペイメントサービスを行っています。ここ数年はペイメントサービスの成長が著しいため、種類豊富なQRコード決済サービスをニーズに合わせて提供し、日本で初めて海外のQRコード決済サービス「Alipay」のオンライン活用を実現するなど海外決済を得意としており、海外の様々なモバイルペイメントを導入。2017年以降は、実店舗での海外のモバイルペイメントを利用可能にするアプリ 「UnivaPay StoreApp」をリリースし、訪日外国人観光客の皆さんが日本でも使い慣れた決済手段を利用できるよう、環境を整えてきました。

 

―決済サービスをメイン事業として展開していた貴社が、ふるさと納税に参入したきっかけは

当社はインバウンド向けの施策を得意としていましたが、2021年頃に訪日客の需要が大幅に減少したことを受け、新規事業の創出に向け、社内での試行錯誤を重ねていました。この過程で、国内観光市場や国内企業への需要の再評価に着目しました。さらに、事業者だけでなく、地域創生に力を入れる自治体との連携を模索することで、地域経済の活性化に寄与できる可能性を見出しました。
ただし、サービスの提供がない状況で、単に「決済事業を行っています。取引をお願いします」と提案しても、話が前に進むことはありません。地方自治体や地域に根ざした事業者と共に何かを実現できるか、どのような提案が可能かを検討した結果、「ふるさと納税」が重要なキーワードとして浮かび上がりました。このふるさと納税を通じて、より深く地方との接点を築いていくことが最終的な目標です。

 

―ふるさと納税事業者としては、後発になりますが…

ふるさと納税事業への参入を決めた際、既に多くの大手ポータルサイトが存在する中で、私たちはどのように特色を出していくかを考えました。その結果、新たなポータルサイトを立ち上げるのではなく、返礼品をその場で受け取り、使用できるサービスに特化することにしました。このアプローチを「現地消費」と呼び、このコンセプトに基づいてサービスの設計し、「ココふる」を立ち上げました。
「ココふる」というサービスの名称は、若手社員が考案しました。「ここで見つかる、ここで使える、ふるさと納税」という意味を込めて「ココふる」と名付けられています。

 

自治体専用ふるさと納税ECサイト構築やポスター、卓上用POPなどの販促グッツも無料提供

 

 

シンプルに、寄附者・事業者・自治体に負荷のないスキーム(事業体系)を追求

 

―同じように現地消費型ふるさと納税サービスを提供している競合他社との差別化や、貴社の強みはどういった点にありますか

他社の現地決済型ふるさと納税サービスでは、ふるさと納税を行った後、地域共通クーポン電子マネーを受け取り、その電子マネーを利用する運用が一般的です。このようなシステムでは、お客様にアプリをダウンロードしてもらう必要があります。
また、店舗側でも読み取りのための機器が必要となり、スタッフにも追加オペレーションが発生します。
これが良いか悪いかの議論ではなく、ココふるのサービス設計では、店舗側のオペレーションを増やさないことを重要な指針としています。その結果、店舗や施設、そして自治体が案内しやすく、利用者にも納得していただきやすいシステムとなっています。これがココふるの特徴であり、他社との差別化要因だと思っています。

 

―具体的にはどのようなユーザー体験になりますか?

寄附者は、ポスターやチラシに表示されたQRコードをスマートフォンで読み取り、選んだ商品に対してふるさと納税の手続きを行います。ふるさと納税が完了すると、ココふるのマイページでチケットが発行されます。利用時には、このチケット画面を施設スタッフに見せて、「お礼の品を利用する」ボタンをタップするだけです。
このシステムでは、申し込みから利用までが簡単で、施設では画面を提示するだけで済むため、複雑な手続きは不要です。また、ワンストップ特例の申請の有無も選択できるため、利用者にとって便利です。

 

―事業者、自治体それぞれのメリットは

事業者にとっては、読み取り端末や専用アプリの設置が不要であり、寄附者のスマホのスクリーンタップを確認するだけです。また、事業者専用の管理画面が用意されており、ふるさと納税の実施件数や実際の利用状況を常時確認することが可能です。
自治体にとってのメリットとして、店舗や施設への説明がしやすい点が挙げられます。現地決済型ふるさと納税は、店舗や施設にとって「難しそう」と思われがちです。そのため、サービスを開発する際には、「店舗に新たな機器を設置する必要がない」「店舗の運用を大きく変更しない」といった点を重視しました。これらは私たちのサービスを利用する大きなメリットだと思います。
店舗の開拓や返礼品の設定は、自治体と協力しながら行っていますが、総務省のルールやガイドブックに準拠した形で進めています。また、自治体専用の管理画面を提供し、現地消費型ふるさと納税を導入した店舗の状況を横断的に把握することが可能です。

 

―初期費用や導入コストが無料ということですが、詳細は

はい、現在のところ、初期費用や導入コストは不要で、月額の固定費も無料です。自治体へ請求させていただくのは、寄附が発生した際の手数料5%のみとしています(2023年12月現在)。初期コストと運用コストが無料である点は非常に魅力的と、自治体からの関心も高まっています。この手軽さが評価され、気軽に導入を試みる自治体が増えています。
また、私たちの方で「ココふる」のポスターやPOPを無償で提供し、観光案内所や飲食店などに掲載を依頼しています。これらの掲示物を通じて「ココふる」を知り、サイトに訪れる方も多いです。

 

ココふるでは返礼品開発支援も実施。自治体様と一緒になって、訴求できるモノ・スポットを探し、魅力的な返礼
品の提供を目指す

 

 

地域と人をつなぐ「ココふる」を全国に広めていく

 

―導入事例を教えてください

最初に「ココふる」を導入したのは、北海道洞爺湖町でした。洞爺湖町は、豊かな温泉地が広がる洞爺湖と支笏洞爺国立公園に隣接しており、多彩なレジャー体験が可能な人気の観光地で、年間で250万人以上の観光客が訪れます。こうした豊富な観光資源を活かし、温泉の入浴券や洞爺湖遊覧船の乗船券、様々な食事券などを現地消費型ふるさと納税の返礼品として提供しています。
さらに、洞爺湖町に続き、北海道の幌加内町でもサービスを開始しております。
始まってまだ間もないですが、寄附者数は着実に増加しており、他の自治体からも「ココふるの導入についてのリリースを見た」という問い合わせをいただいております。

 

―新興サービスですが、一般の方の認知度や反響は

TOYAKOマンガ・アニメフェスタや洞爺湖マラソンなどのイベント開催時に、ブースにて自治体と共に「ココふる」の紹介や寄附の受付を行いました。現地消費型ふるさと納税サービスは増えていますが、一般の方々にとってはまだまだ認知が浸透するところまではいっていないようで、「こんなことができるんですね」と驚かれることも多いですね。やはり送料・手数料といったコストがかからないことで、ポータルサイトでは出品が難しい単価の品物やサービスも提供できており、返礼品が充実しているというメリットも感じられるのではないでしょうか。
自治体側から「ポータルサイトとどういった住み分けをしたらいいか」と尋ねられることもありますが、アプローチの仕方が異なるので競合という認識ではなく、うまく使い分けいただけると思います。「ココふる」での体験が思い出の一つとなって、その後ポータルサイトで現地のものを取り寄せる流れが生まれるようなこともあればいいなと感じますね。

 

―改めて、現地消費型ふるさと納税の魅力について

旅行や仕事で現地を訪れた人々が、その場で「ココふる」を知り、寄附を申し込み、すぐに利用できるのがこのサービスの特長です。施設の利用や飲食、お土産など、現地の魅力を直接体験できることに特化しており、地域活性化と消費の促進に貢献できると考えています。返礼品や体験を通じて、旅行先の自治体を身近に感じてもらい、長期的なファンになっていただくことが目標です。既存の資源を活かしつつ、税収を高める可能性もあり、導入のしやすさも魅力の一つです。

 

洞爺湖町の返礼品。温泉入浴券、乗馬体験、ビール飲み比べ、お食事券など洞爺湖町の名物が並ぶ

 

―最後に全国の自治体へメッセージをお願いします

ふるさと納税の5割ルールが厳格化され、返礼品の内容に影響が出ているという声が聞かれます。特に、配送コストの上昇が続いている現状では、現地消費型ふるさと納税はコスト削減の一助となります。北海道、沖縄、離島など、通常よりも送料が割増しになる地域にとっては、地域差を埋めるひとつの手段となります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)で大掛かりな仕掛けを導入するよりも、運用上の負荷が少ないシンプルなシステムの方が、持続可能性が高いと考えています。現地消費型ふるさと納税に関心のある自治体からのご連絡をお待ちしております。

 

ココふるへの資料請求・お問合せはこちら

 

(取材日:2023年12月18日)

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