プレミアム商品券・地域通貨のデジタル化で自治体の負担軽減と消費者利便性向上を実現
経済的困難の中、地方自治体は地域経済活性化のためプレミアム商品券などに注力している。従来の紙の商品券からデジタル化が進み、キャッシュレス決済の普及とともにデジタル通貨プラットフォームアプリ市場も拡大している。この状況下、GMOインターネットグループのグループ会社であるGMOデジタルラボとGMOペイメントゲートウェイが協業し、「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」を提供している。
本記事では、GMOデジタルラボの事業責任者である羽田氏にこのサービスについて話を聞き、デジタル化された商品券がどのように自治体の業務効率化と消費者の利便性向上に貢献し、地域経済の活性化につながっているかを探る。
GMOデジタルラボ株式会社 アプリ事業部 アライアンスSC
羽田 創希
モバイル商品券プラットフォーム byGMOのPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)として従事
貴社が提供しているソリューションについて教えてください
「アプリ事業」「デジタルマーケティング事業」「デジタルデバイス事業」の3つが主な事業分野です。
特に「アプリ事業」は当社の主力事業で、2014年に飲食店や小売業など、多様な店舗の販売促進ツールとして『GMOおみせアプリ』を開発しました。このパッケージ型スマートフォンアプリはカスタマイズが可能で、店舗情報の提供、クーポンの発行、スタンプカード機能に特化しています。
現在までに10,000店舗以上で導入されており、これが基になって「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」などのサービス提供に至っています。
「GMOおみせアプリ」は、シンプルながら販促集客に必要な機能が集約されているアプリですね
そうですね。その後、コロナ禍で買い物のオンライン化や非接触の流れが加速する中、来店促進の難しさや地域経済の活性化という課題が浮き彫りになってきました。店舗側からはもっと地域に向けて発信をしたいという要望をいただいていました。
また、地域活性化のために自治体が発行しているプレミアム商品券は、販売時に大行列ができている光景が見られ、運用や管理が大変だというお話も聞いていました。そこで、自分たちの持つソリューションが地域活性施策や地域DXの一助になれないかと考え、2021年に「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」をリリースしました。
「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」について具体的にお聞かせください
「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」は、自治体や事業者が発行する紙の商品券をデジタル化するサービスです。例えば、自治体が1万2,000円分の商品券を1万円で購入できる設定を行い、消費者はどこでもオンラインで商品券を購入することができます。
商品券を利用する際は、消費者が加盟店で決済用QRコードをスキャンすることで支払いが可能です。自治体や事業者は、別途システム開発することなく商品券をデジタル化でき、紙の商品券に伴う回収、保管、集計、精算、換金といった業務負担を軽減でき、使用状況のデータ確認機能も備えています。また、自治体専用のサイトを作成し、ロゴやデザインをカスタマイズできるため、地域に合わせた展開が可能です。さらに、現在注目を集めているデジタル地域通貨の発行にも対応しています。
ユーザー側や、加盟店のメリットはいかがでしょうか。まだまだ紙の商品券のニーズがあるという声も聞かれますが
おっしゃる通りです。アプリが使いにくかったら、「紙でいい」となってしまいかねません。やはり、幅広い年齢層の方に使っていただくサービスということで、購入時の導線や残高、履歴の確認などを見やすくするなど、ユーザー体験(UX)、ユーザーインターフェース(UI)を最優先に考慮して設計・開発を進めてきたと自負しています。
消費者側の使い方としては、スマートフォンを用いて専用サイトからクレジットカード決済等でデジタル商品券を購入(チャージ)し、QRコードを用いたキャッシュレス決済として利用することができます。当然ながら加盟店の参加が欠かせませんので、「GMOおみせアプリ」のように店舗情報、商品やメニューの掲載、クーポン発行といった運用ができる機能を無料で提供させていただいています。
加えて「GMOおみせアプリ」との連携も可能です。デジタル商品券が利用できる加盟店舗が多くなるほど、デジタル商品券の利用者が増え、当サービスが地域経済の活性化により貢献していけることを目指しています。
競合他社との差別化のポイントなどはありますか
「GMOおみせアプリ」と連携することで、加盟店の販促力強化や来店促進に活用できるお知らせ配信(プッシュ通知)やスタンプ機能などをご利用いただける点、あとはセキュリティ面の強靭さや、新機能の提供、柔軟にカスタマイズできる点、加えて事務局機能を当社で担い、ご相談をお受けしたりアドバイスなどを無償で行っている点は導入自治体やお取引企業から評価をいただいています。また、自治体が運用する上でのサポートも伴走型でしっかり支援していきます。
現在の運用自治体数と、導入自治体の事例の紹介をお願いします
2021年の運用開始以来、数十件の自治体(2024年3月現在)に導入いただいています。
中でも岐阜県養老町様は、プロダクトリリース時からプレミアム商品券と地域通貨の両方で導入いただいています。町独自の地域通貨アプリは「養老Pay」とネーミングされ、QRコード決済ができるほか、店舗情報や観光情報、見守り機能などをつけています。
特筆すべきなのが、養老町様は人口25,000人ほどの自治体ながら、「養老Pay」には約20,000人もの会員登録をいただいていることです。プレミアム商品券と地域通貨に加え、養老町以外に住む人が養老町の飲食店や観光施設を利用すると、支払い代金に応じた金額が電子マネーアプリ「養老Pay」にチャージされるという「Back to the YORO」キャンペーンや、マイナンバー申請者にポイントを付与するキャンペーンなど様々な給付事業に、当サービスをご活用いただいていることも登録数の多さの背景だと分析しています。
登録者数の多さは驚きです。デジタルデバイド対策など工夫された点も多いのではないでしょうか
そうですね。養老町様はもともと紙の商品券とデジタル商品券の併用でスタートされています。当初は紙の比率の方が多かったのですが、直近のご利用状況でいうとデジタル商品券の比率が上がっていて、7割ほどだと伺っています。「養老Pay」に登録しているだけではなく、実際にご利用いただいているというのは当社としても手ごたえがあると感じています。
養老町様や商工会様がプロモーションをかなり積極的に行われていて、プレミアム商品券は開始1時間で売り切れになってしまい、消化も100%近いと伺っています。高齢者の方を中心に苦手意識をお持ちの方などが見受けられますので、当社側でコールセンターを準備、お問い合わせにはしっかり対応させていただきました。
養老町様はほぼ100%消化ということで、貴社のサービスの使い勝手がいい点やサポートが充実しているという点も影響しているのでしょうね
追加の機能を随時開発しており、ポイント機能、スタンプラリー機能などをリリースしています。例えば“ラジオ体操に参加したらポイント付与”といった健康ポイントとしての運用もしていますし、その他に生体認証機能、決済手段の追加なども行っています。セキュリティ面では、3Dセキュア2.0対応済みで、マイナンバーカード認証による本人確認とSMS認証を追加認証方法として導入しています。これらの対策を通じて、クレジットカード利用時のセキュリティを強化し、今後も利用者の皆様へさらなる安心と安全なサービス利用環境を提供していきます。
また、2023年からはスマホ非保持者もデジタル商品券を利用できるよう、「養老Payカード」も導入しました。物理カードに印刷されたQRコードを対象の店舗で提示することで、スマートフォンがなくても地域限定デジタル商品券や電子地域通貨の利用が可能となります。カードとはいえ紙よりも集計管理などが簡易なので、高齢の方やスマホを持つ予定がないといった方に対してはリーチ性の高い活用方法だと実感しています。
まさに、住民に寄り添った部分ですね
その通りで、いくら広めたくても利用者が使ってくれなければ成果を出すことは難しいです。「使いやすい」「これがあると便利だ」と感じてもらうことが、広がっていくキーファクターであることは間違いありません。
また「モバイル商品券プラットフォーム byGMO」に関してもプレミアム商品券や地域通貨としてだけではなく、例えばマイナンバーカードと連携して本人確認ができたり、地域通貨から地方税の納付が可能だったり、そういった身近なサービス提供などもどんどん提案させていただきたいですし、継続的にご活用いただけるサービスとして開発を進めています。
最後に自治体にメッセージをお願いします
プレミアム商品券は発行や運用面にハードルを感じる自治体も多いと思います。しかし、地域に活気をもたらす効果的な施策のひとつであることは間違いありません。
いかに負担なく運用できるかは、我々が自信を持ってお手伝いできる部分だと自負しています。商品券に限らず、様々な給付事業やDX推進という面でお力になれると思いますので、ぜひお気軽にご相談いただけますと幸いです。
(取材日:2024年3月4日)