一般社団法人 自治体DX推進協議会

「プロキュアテック」がIT調達を変える。情報化企画書から95%の仕様書をたった15分で自動生成

プロキュアテックの提案書自動審査の流れ

 

自治体と事業者が調達を通じて適切な関係を構築することは、住民サービスの質を高めることに繋がる。しかしながら、自治体職員から見ると、IT調達は難易度が高く、負担も増えている現状がある。
「プロキュアテック」はGPT-4に対応した調達仕様書自動作成サービスとして、こうした自治体職員の悩みを解消し、調達を通じた自治体と事業者間の協力関係を促進する―

 


 

合同会社川口弘行 代表社員 川口 弘行様

合同会社川口弘行 代表社員 川口 弘行 プロフィール
  • 芝浦工業大学大学院博士後期課程修了、博士(工学)。
  • 総務省地域情報化アドバイザー。
  • 1996年行政書士登録。2004年日本行政書士会連合会高度情報通信社会対策本部WG委員。
  • 会津大学短期大学部非常勤講師、東京都立中央・城北職業能力開発センター講師を経て、2009年高知県CIO補佐官、2013年経済産業省CIO補佐官、東京都港区情報政策監、2015年佐賀県情報企画監。2017年川口弘行合同会社設立。
  • 省庁、都道府県、区市町村におけるCIO補佐官業務に携わる。



 

 

―自治体のIT調達への課題が、開発のきっかけとうかがいました

DXというキーワードはよく聞くものの、実は自治体が自ら手作りでDXを実施するケースはまずありません。ほとんどの場合、外部の事業者に委託してDXが実現されています。これには調達のプロセスが欠かせませんが、現実には、自治体のIT調達の成熟度や効率性に課題を感じています。

 

事実、多くの自治体が自らの力で調達業務を遂行できていない状態です。実際には、他の先行する自治体の調達仕様書を参考に、それを元に自分たちの仕様書を作成して調達を行うというパターンがよく見られます。そして、事業者側から仕様書のアイデアを取り入れる、あるいは事業者に仕様書を作成させるといったことも実際に行われています。

 

こうした状況が生まれる背後には、事業者側が自社の利益を最大化するような方向づけを行い、自治体がそれを受け入れてしまうことがあるからです。調達の目的は公平性を保つことであり、特定のベンダーに有利な状態を作ることは本来の目的から外れています。

 

では、なぜこのような状況が続いているのかというと、自治体がIT調達に慣れていない、またはIT調達を苦手としているため、作業が遅れがちになることが要因として挙げられます。予算の取得には締め切りがあるため、適切な手続きを踏む時間がなく、短期間で手続きを進めざるを得ない状況になります。このような背景が、課題の根本原因として長らく続いていると考えられます。

 

 

―その課題解決のためのプロキュアテックを開発されたと

はい。調達の業務に関する職員の負担軽減と業務の中立性の維持を目指して、「プロキュアテック」を開発しました。このシステムは、調達業務で特に困難とされている部分を効率的にシステム化し、AIにより高速で処理を行うことができます。

 

初期の段階では、システムが自動生成する仕様書は7割から8割程度でした。そのため、残りの部分は職員の能力や判断に大きく依存していました。しかし、近年の生成型AI技術の導入と進化により、今では仕様書の95%を自動生成することが可能となりました。

 

プロキュアテックの提案書自動審査の流れ

 

 

―具体的な機能について教えてください。

大まかな流れは、必要な情報をエクセルのファイルに記入し、それをプロキュアテックにドラッグ&ドロップすることで、調達仕様書やRFIの文章、将来的に利用するプロポーザル審査表などの文書を自動生成します。出来上がった文書はWordやExcelのファイル形式で、後から職員が自由に修正可能です。

 

具体的にどんな情報を入力するのかというと、大きく2つのシートに分かれています。

ひとつは、システムの構成や調達の大まかな内容に関する情報を記入するシートで、情報システム部門の方が主に記入することを想定しています。

 

もうひとつは、「情報化企画書」という名のシートで、システムを導入したい、または事業を進めたい現場の職員が背景情報も含めて記入します。実際に、この数行程度の文章から、仕様書を自動的に生成する仕組みとなっており、入力後5~15分で文書が自動生成され、ダウンロード可能です。

自動的に作成するだけではなく、例えばその仕様書の中に記載される内容が明らかになると、調達の品質を向上させるようなアドバイスもこの文章の中に盛り込まれることになります。

 

そうした内容を確認しながら、例えばもう一度「プロキュアテック」で仕様書を生成し直す、条件を変更する、または完成した文章を直接修正するなど、様々な方法で調達仕様書の品質を向上させることが可能です。

 

最初の段階で文章が完成しないという問題がある場合、この「プロキュアテック」を使うことで、先に草稿を作成し、その後で修正を加えるというアプローチが、実際の職員の方々の得意分野でもあります。このような役割分担で進めていくことで、自治体職員の皆さんの心理的な負荷を減少させつつ、品質を維持することが可能となる仕組みになっております。

 

 

―それは自治体職員さんにとっても安心材料ですね。

実際に導入いただいた自治体でも、職員の調達に対する不安が軽減されていると感じます。実は、自治体の職員にとって、ITを含めた調達や事業者選定は日常的な作業ではありません。実際、年に1回行われるかどうか、または一生遭遇しないまま職員としてのキャリアを終える方も多いです。

 

そのため、経験が積み重ねられにくい領域とも言えます。大半の職員がこの業務に初めて取り組むことが多く、同じ調達業務を2回行うことは少ないでしょう。手続きを簡単にし、速やかに終わらせたいという気持ちは強いはずです。このツールを活用することで、中立的に、かつ効率的に業務を進めることができると考えます。

 

一方、職員に専門家になってほしいと思うのは難しいかもしれません。一度限りの調達業務のための知識や経験が、次回も役立つとは限らないからです。そうした中で、プロキュアテックを使用し、効率的な作業方法を見つけて楽に業務を進めてもらいたいと思います。このプロキュアテックを使うことで、職員に安心感を提供できれば理想的です。

 

実際にいくつかの自治体でも導入いただいておりますが、ツールを導入して感じることは、ツールそのものよりも、職員の意識や態度を変革するための手段としての価値が大きいと感じられます。

 


 

調達の目的は問題解決の事業者に委ねるということ

 

―職員の意識や態度を変革するとは?

多くの場合、調達の真の目的が見失われているように感じます。多くの自治体の職員は、システムの導入を主な目的として捉えており、結果としてIT調達が単なる「買い物」としての性格を強く持っています。
このような状況下では、導入そのものがゴールとなってしまいます。しかし、システムの導入はあくまで手段であり、背後にある本質的な目的を追求すべきです。それにも関わらず、多くの職員がこの本質的な目的を十分に理解していない気がしています。

 

ここで一度立ち止まり、本質的に何を実現したいのかという視点から、調達や事業の方向性を考える習慣を身につけることはかんたんではありません。ですが、それができると、調達を含めた事業を職員が進めやすくなります。その意識変革を、プロキュアテックの導入を通じて実現することを重視しています。

 

 

―確かに導入自体を目的化してしまうというケースはよくありますね

IT調達の目的は、単に製品を購入するだけではなく、事業者と協力して問題を解決することです。事業者に何を期待するのかが不明確だと、双方の理解が難しくなります。

 

自分たちが実際に何を達成したいのかを明確に文書化することが求められています。ただの「このシステムが欲しい」という動機からの調達では、実際の企画の存在がなかったわけです。目的が単に物を買うだけなら、企画書は不要に感じるかもしれませんが、企画書の作成は絶対に必要です。多くの職員がこれまでそれを実施していなかったので、改めてこれを実践することは、自治体職員にとっては大きな負担に感じられるでしょう。

 

実際、簡単に「企画書を書いてください」と要求されても、多くはそれを適切に実施できません。そのため、プロキュアテックでは、この作成を補助するツールやAIチャットボットを活用し、企画書の作成を支援する仕組み「ナビゲーター機能」を提供しています。

 

この仕組みを使用すれば、書きかけの情報化企画書を読み込ませ、AIチャットボットとのディスカッションを通じて、自らの考えを整理し完成させることができます。

 

 

―プロキュアテックとの対話を通じて、調達の本当の目的を定義する、といった感じでしょうか?

そうですね。企画書を通じて問題を整理することで、従来の方法を改善するサポートを行っています。IT調達の目的は、単に物を購入するだけでなく、事業者と共に問題を解決することで、一部の課題を事業者に委ねることが必要です。明確な問題とゴールを設定しないと、事業者も何をすべきか迷ってしまいます。

 

契約後、事業者とのパートナーシップの中で、共通のゴールの認識を共有することも重要です。何か問題に直面した場合、お互いのアイデアを持ち寄りながら解決へと進めることができます。そうすることで、調達を通じて、真の目的である問題解決に焦点を当てるよう取り組めるようになります。

 

 

―プロキュアテックが普及することで、調達はどのように変わっていくんでしょうか?

プロキュアテックを採用する団体が増えれば、全国的に調達の品質向上が期待されます。これにより、事業者のマインドも変わってくることでしょう。

従来、自治体への営業は、自治体のキーパーソンに気に入られることを重視した営業が主流でした。そうではなく、適切な提案と価格競争の文化が全国的に浸透することが望ましいと思います。

 

プロポーザルは、自治体が事業者に対してクイズを出しているわけではないんです。自治体しか知りえない情報を当てたほうが勝ち、というゲームではなく、自治体が何を求めているかをきちんと明確に要求したうえで、事業者がそれを実現するための仕組みです。

 

プロキュアテックの事業者向けの事前評価やシミュレーション結果の機能は、提案が不足している部分を指摘し、それを改善することでプロポーザルの競争力を向上させる役割を果たしています。これが全国的に広まり、標準化されれば、調達の品質や提案の質も上がるはずです。

 

 

―プロキュアテックの自治体以外での活用についてはいかがですか。

自治体以外のところで考えると、大きく2つの方向性が考えられます。一つは、自治体向けコンサル企業がこのツールを利用して業務効率を上げること。これは容易に想像できるシナリオだと思います。

もう一つの方向性は、事業者が自治体への提案時に、プロポーザルの提案書にAIによる自動評価機能を使用することです。この機能は「提案書自動審査」と呼ばれ、事業者からの提案書を、AIを活用して審査するものです。

 

もともと、この機能は自治体の審査員の業務効率化を目的に開発されましたが、事業者側から見れば、自らの提案がどれだけ客観的に評価されるのかを事前にシミュレーションできるツールとなります。

 

自動生成されたプロポーザル審査表


プロキュアテックにより付記された評価コメント

 

―事業者はプロポーザルのシミュレーションができるということですね。
では最後に自治体職員さんへのメッセージ、自治体DXについてのお考えをお聞かせください

自治体における職員の数や予算の縮小が進む一方で、国など外部からの業務要求が増え続け、自治体職員の業務は膨らむ一方です。その結果、行政サービスのクオリティが下がる恐れがあると思います。しかし、そういった厳しい中でも頑張ろうとする職員が存在することは、非常にありがたいことだと感じます。

 

制約のあるリソースの中でも、DXや最新の技術を駆使して、質の高い市民向けサービスを実現する手助けをしたいと思っています。

 

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