一般社団法人 自治体DX推進協議会

「生成AI開国の地」横須賀市、ChatGPTで業務効率化を推進

神奈川県横須賀市が、全国の自治体に先駆けてChatGPTを全庁導入し、大きな注目を集めている。業務効率化や市民サービスの向上だけでなく、職員の意識改革や自治体間の連携強化など、行政DXを多角的に推進する狙いだ。課題解決に向けた職員の創造性を引き出し、新たな行政サービスを生み出す挑戦が始まった。ChatGPT導入の効果などについて、横須賀市経営企画部デジタル・ガバメント推進室 室長の太田耕平氏に話を聞いた。

 

横須賀市は、職員向けに「チャットGPT 通信」を定期発行し、ChatGPT の活用事例やTips を紹介


 

横須賀市 経営企画部 デジタル・ガバメント推進室 室長 太田 耕平様

横須賀市 経営企画部 デジタル・ガバメント推進室
室長 太田 耕平 プロフィール
  • 化学メーカーでの勤務ののち横須賀市役所に転職。
  • 都市部、市民部、財政部を経て、2019年に市役所内のシンクタンク組織である都市政策研究所に異動。
  • 横須賀市基本構想・基本計画(YOKOSUKAビジョン2030)、実施計画策定を担当。
  • 2022年よりスマートシティ事業の立ち上げを担当。
  • 2023年デジタル・ガバメント推進室に異動、2024年4月より現職。


 


 

 

ChatGPTを全庁導入し、「行政DX」を力強く推進

 

―全国の自治体に先駆けてChatGPTを全庁導入したことで大きな注目を集めています

ChatGPTの可能性に着目したのは2023年に入ってからのこと。デジタル・ガバメント推進室で、安全性を確認した上で、導入できる方法がないか検討を始めました。そして2023年3月末、市長から「Chat GPTを使って何かできないか」という指示もあって、約一か月後の4月20日には全庁での利用を開始するに至りました。
導入に至る過程で大きかったのは、生成AIの活用は単なる業務効率化だけでなく、職員のデジタルリテラシーの向上、ひいては市民サービスの質の向上にも繋がるという点です。ChatGPTを、行政DXを強力に推進するツールとして位置づけ、全庁を挙げて積極的な活用を図っています。

 

―メディアでも大きく取り上げられ、注目度は非常に高いですね

ChatGPT導入の発表後、テレビ・新聞などの国内主要メディアに加え、CNNや中国、台湾のテレビ局など海外メディアからも数多くの取材を受けました。
市民の皆様からは「横須賀市が先頭に立って行動を起こしていることに嬉しさと誇りを感じる」といった応援のメッセージを数多くいただきました。ChatGPTの全庁導入の発表は副次的な効果として、職員と市民のシビックプライドの醸成にも繋がったと感じています。

 

―ChatGPT導入によって、具体的にはどのような変化が生まれているのでしょうか

利用開始からの約1ヶ月間で、全職員約3,800人の半数にあたる約1,900人がChatGPTを利用しています。主な用途は、文書の案の作成や校正、知りたい情報の検索・調査、アイデア出しなど。職員向けの利用者アンケートでは、実に80%以上の職員が「仕事の効率が向上した」と回答しており、早くも一定の手応えを感じています。また、私たちはChatGPTの導入を単なるツールの導入ととらえるのではなく、全庁的な意識改革の好機だとも捉えています。
一例を挙げると、庁内全体の行政手続きの合理化をけん引するデジタル・ガバメント推進室から職員を派遣し、各部のDXを進めています。昨年度は健康部にデジタル・ガバメント推進室の職員が入り込んでいって、健康部の業務のDXを推進しました。ひとつの部局のDX化が、他の部局にも影響を与えます。各部局にどんどんDXが波及していくのを実感しています。

 

定期的に全庁的な勉強会やイベントを開催し、庁内の機運向上に繋げる

 

 

「横須賀市AI戦略アドバイザー」を新設。ChatGPTの戦略的活用を加速

 

―自治体における生成AIの適切な活用促進の好事例です。今後の展開について教えてください

ChatGPTを業務で真に使いこなせる人材の育成が重要と考え、横須賀市AI戦略アドバイザーでもある深津貴之氏の監修による横須賀オリジナルの研修を行いました。各職員の能力に合わせた実践的な研修プログラムを通じ、職員が単にChatGPTの利用者ではなく、ChatGPTを業務改革に本格的に活かせる職員の育成を目指しています。
加えて、職員のスキル向上を図った上で、新たな活用事例を掘り起こし、全庁展開するためのプロンプト(ChatGPTへの質問や指示)コンテストの実施も実施しました。優れたプロンプトのアイデアを職員から募り、表彰することで、モチベーションの向上と活用の幅の拡大を狙います。
こうした取組を通じて、単にChat GPTを使うだけでなく、ChatGPTと職員が協働して業務の質を高めていける組織を目指します。中長期的には、AI活用を前提とした業務フローの最適化や、AIと連動した市民向けサービスの開発なども視野に入れています。

 

横須賀市AI 戦略アドバイザー 深津貴之氏によるChatGPT セミナーも開催


 

―ChatGPT導入と活用のモデルケースとして、他自治体からの問い合わせも多いと聞きます。ぜひ、アドバイスやメッセージをお願いします

取組を通じて実感したのは、デジタルテクノロジーを使いこなすスキルや知識ではなく、全庁的な“改革意識”が何より大切なのだということです。これがなければ、たとえ素晴らしいツールがあっても、日々の業務を優先してしまい、新たな取組は後回しにしてしまいかねません。
「生成AI開国の地」というキャッチコピーを掲げて取り組んできた我々の経験や知見は惜しみなく全国の自治体と共有し、共に行政DXを推進していきたいと考えています。そして、行政DXの加速に少しでも貢献できれば幸いです。

(取材日:2024年5月2日)

 

横須賀市 経営企画部 デジタル・ガバメント推進室
〒238-8550 神奈川県横須賀市小川町11番地 本館1号館7階

TEL:046-822-8201

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