一般社団法人 自治体DX推進協議会

【調査レポート】自治体における移住・定住施策の現状と課題

自治体と事業者を繋ぎ、DXで地方創生を実現する
一般社団法人 自治体DX推進協議会

全国の自治体で移住促進の取り組みが進められていますが、その手法も変化してきています。これらの変化や各地の特徴的な取り組みを把握するため、全国の自治体100以上の移住担当者へのヒアリング調査を実施しました。

本レポートでは、そこから見えてきた最新の移住施策のトレンドと、効果的な取り組みのポイントについてまとめています。

 

移住者層と移住ニーズの変化

近年、移住者の層が大きく変化しています。従来はリタイア層が中心だった移住相談ですが、現在は30~40代の子育て世代が主流となっています。特にコロナ以降、この傾向は顕著になり、リモートワークの普及と都市部の高額な住居費を背景に、地方移住への関心が高まっています。ただし、実際にリモートワークで移住できる人は想定よりも少なく、多くの移住者は現地での仕事を探す必要があるのが現状です。

 

移住の形態も多様化しています。利便性を重視した「都市型移住」、自然との調和を求める「里山移住」、そしてその両方の良さを取り入れた「ハイブリッド型」など、移住者のニーズは細分化しています。

 

例えば、車で30分程度であれば都市部にアクセスできる里山地域は若い世代からの人気が高く、「ほどほど田舎」として新たな価値を生み出しています。
移住地希望ランキング(2023年ふるさと回帰センター調べ)を見ても、静岡県や群馬県、栃木県、長野県など、県内に自然が豊富な地域があり、都市部からのアクセスがいい県が人気になっています。

移住先希望地ランキング

 

効果的な施策とは?支援金から関係づくりへ

多くの自治体が一定の移住希望者の「取り合い」という認識があり、施策においては単なる支援金による誘致では限界があり、より本質的な地域の魅力向上へと軸足を移しています。実際、支援金目当ての移住は定着率が低く、地域にとっても移住者本人にとっても望ましい結果につながらないという教訓が得られています。

また、最近では近隣の市町が共同で移住イベントや相談会を開催するなど、連携した取り組みを行う自治体も増えています。「取り合い」という意識から、地域全体を盛り上げていくことで移住促進につなげたいという思いがあるようです。

 

Uターン施策の重視

人気移住地でない自治体を中心に、Uターン施策に特化する動きが見られます。地域との縁やつながりがある人材の方が定着しやすいという実態を踏まえた戦略です。

特に注目すべきは、地元の学生に向けた取り組みが増えていることです。「出ていくのは仕方ない」という前提に立ち、地域の良さを若いうちから意識してもらい、進学や就職で一旦地域を離れても、いつか戻ってきたいと思える関係性、地元への愛着を築くことを重視しています。

 

【具体的な事例】
・関東圏の大学との連携によるUターンフェアの開催
・高校3年生の段階からの地域との関係性構築(地域アプリへの登録など)
・地元企業でのインターンシップ機会の提供
・奨学金返済の補助
・配偶者(非地元出身)向けの移住体験ツアーの実施

 

専門知識を持つ相談員が活躍

電話やメール、オンライン相談会など相談方法が増えたこともあり、相談件数は年々増加しています。相談窓口を役所外に設置することで、より気軽に相談できる環境を整える等の取り組みも始まっています。また、相談~移住までには年単位の時間が必要となるため、移住相談専門の人材の採用など、継続できる体制づくりが必要です。就職支援、不動産など専門知識がある人や、移住経験者を登用するケースも増えています。

 

【具体的な事例】
・外部施設に相談窓口を設置(商業施設内など)によるアクセシビリティの向上
・移住経験者の相談員としての採用(特に地域の実情を熟知した世話役的人材の活用)
・仕事・住居・子育てなど専門分野別の相談体制の確立
・オンライン相談の体制整備

 

移住相談件数

関係人口の創出と定住へのサポート

移住検討者と地域の接点を増やし、地域との関係を徐々に深めていくアプローチも注目されています。
多くの自治体で行われている「お試し移住」「移住体験ツアー」なども、“観光”に留まらず地域の生活が体験できるようなプログラムが盛り込まれています。特に雪国など、気候条件が生活に大きな影響を与える地域では、実際の生活をイメージできる機会を提供することが重要となっています。

 

【具体的な事例】
・地域住民と移住検討者の交流機会の創出(カフェイベントなど)
・地元企業との連携による移住者向けの優待カード発行
・定期的な交流イベントの開催
・オンラインコミュニティの形成
・地域の特産品や文化を活かした体験プログラムの提供

 

そして、もうひとつのポイントが「定住」への取り組みです。「理想」と「現実」のギャップによって数年で転出してしまうケースも多く、移住後のミスマッチを防ぐための施策が重要です。移住者同士の交流会や先輩移住者との関係づくり、地元の企業と連携した就職支援など、コミュニティの形成や仕事の創出が「暮らしやすさ」につながっているケースもあります。

 

今後の展望と課題「発信力と継続」

移住施策の課題として多くの自治体から聞かれたのが「発信力の強化」でした。観光地として有名な地域など知名度が高い地域とそれ以外では、移住地選びというスタートで差がついてしまうという印象があり、地域の魅力、特色の発信は重要です。SNSやWEBサイトを活用したPRを取り入れている地域も増えていますが、差別化や継続が難しいという現状があります。Uターン施策に特化している自治体の事例のように、「二拠点」「子育て世代向け」「生活コストが抑えられる」など地域の特色を生かした「移住のスタイル」を明確にし、それに合わせた発信をしていくことが必要です。

 

移住施策は単なる人口増加策ではなく、地域全体の魅力向上と持続可能性を高めるための総合的な取り組みとして捉える必要があります。成功の鍵は、移住者と地域の双方にとって価値のある関係性を築くことにあります。

 

一般社団法人自治体DX推進協議会では、移住施策について課題を抱える担当者さまからのご相談を受け付けております。他地域での事例などのご案内はできますので、お気軽にお問合せ下さい。

 

移住・定住施策に関わる事業者の皆様へ

当協議会では、自治体の移住施策を支援するソリューションやサービスをお持ちの事業者様との連携も積極的に推進しております。地域の魅力発信、関係人口の創出、移住後のコミュニティ形成など、各自治体が抱える課題解決に貢献いただける新たなアイデアやサービスをお待ちしております。共に地方創生の未来を切り拓くパートナーとして、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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